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ペットロス 新章
この辛さを救ってくれるものはないだろうかと、インタネットを彷徨。
運が悪いのか探し方が悪いのか、さっぱり見つからないので、いまから自分で書くことにしました。
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ボクはその日、どうしてもいつものように起き上がることができませんでした。からだがだんだんと重くてしょうがなくなってきてはいましたが、昨日までは起き上がれたし、少しは歩くこともできたのです。でも今朝は、目を開くのもとてもつらい。
ママがいつもどおり、りゅうどうしょくを持ってきてくれました。カイちゃん、あさごはんよ、たべましょうねと言ってくれたのも、なんだかいつもより遠い声のような感じでした。
ボクは、いつもどおりくちをひらいて声を出してへんじをしようと思いましたが、くちがうまくひらかず、ほんのすこし、あぅあぅとうごかせただけでした。声も声になりませんでした。
ママはびっくりして、パパを呼びに行きました。かいちゃんがへんなのよー、起きてこれないのよーと叫んでいるのが聞こえました。ボクはみみはずーっとよく聞こえてたんです。いえのなかでだれがどこでなにをしているのかもぜんぶしっていました。
えっというパパの声が聞こえました。パパとママがかいだんを、おおきな音を立てておりてきました。ママはボクの横にひざをついて、そっとボクを抱き起こしてくれました。でも、ボクのからだがいうことをきかない。ぐたぁ~っとしてうごけませんでした。
こんどはパパがだっこしてくれました。そしてボクの両手を握って、あたためようとしてくれたのをおぼえています。パパの手はとても暖かくてって、あぁいつまでもそうしていてほしいなぁと思いました。からだがすぅ~っとかるくなるような気がしたのです。
そしたらほんとうに、からだが浮いていたんです。びっくりしました。パパの手からす~っと浮き上がって、ちょうどパパのあたまとママのあたまのまんなかへんにボクはいた。
あれっと思いました。ママが声を出して泣いていました。パパは、肩が震えて、うっうって言ってた。
なにが起きたんだろう。ボクは起き上がれて、それどころか浮いているのに。ウキウキしたいぐらいなのに。パパとママを見ていると、ウキウキしてはいけないきがする。こまったなぁ。
ママは泣き続けるし、パパはじぃっと動かないし、ぼくはふたりの顔をかわりばんこにのぞきこんだりしていたんだけど、そのうちふと、パパのうでのなかにいるのがボクだということに気づいた。あんまり鏡をみたことがないから、すぐには気づかなかったんだよね。
ボクじゃん。
なんで。
ボクがふたりになっちゃったじゃん。